踏み込み温床

今年も踏み込み温床を作る季節がやってきました。とは言っても去年よりは半月ほど早いスタートです。

なぜ半月早く始めたかというと、去年は苗作りのスタートが遅くて収穫が間に合わなかったから。

 

踏み込み温床は、野菜の苗を育てるための保温装置です。装置と言っても電気や灯油などの化石燃料を使うわけではなく、微生物の発酵熱を利用した昔ながらの技です。まずは主な熱源となる稲わらを細かくカット。カットする道具も「押切り」という昔ながらの道具です。


稲わら以外の材料、牛糞と米ぬかです。牛糞はなくても大丈夫なようですが、去年はこれを入れて成功したので今年も使うことに。米ぬかは夜な夜な町中のコイン精米所を回って頂いてきたものです。タダで手に入る貴重な資材。



木枠の中にワラを敷いて、米ぬかをまんべんなくかけて、牛糞をかける。そこに最後の材料である水をたっぷりかけます。次は枠の中に入って文字通り、体重をかけて踏み込みます。これを繰り返すこと7~8回。


サンドイッチして行った資材の厚みは約60cm。ここに竹の枠をつけてビニールを被せたらまずは完成です。うまく仕込めていれば、数日経つと60~70℃を超える高温にまで発熱するはずです。

 

ワラに含まれている主な成分である炭素と窒素。そのままにしていても急速な分解は起こりませんが、米ぬかを加えると窒素の割合が多くなり、微生物がこの窒素を取り込んで急激な分解が始まります。その時に熱が発生する…というのが理屈です。温度が上がらない場合、原因の一つとして窒素不足が考えられるので米ぬかを足すと解決することが多く、逆に温度が高すぎる場合はワラを増やす、といった微調整があるようです。でも、そこまではなかなか手が回りませんので、とりあえず発酵させて、発熱のピークを過ぎるタイミングを待ちます。通所、1~2週間はかかります。その頃に種まきしたポットを上に乗せて本格的な夏野菜の育苗スタートです。

ライター:佐々木