生きものを飼うということ

やまさぁーべの2Fには「森の水族館」と題した飼育室があります。ここには、大江町にすんでいるカエルやヘビ、魚などを飼育して展示しています。今日はそのカエルたちの餌の話です。


苦手な人もいるのでアップの写真は避けます(笑)

たくさん並んだケースの中にヘビやらカエルやらが入っています。夏の雨天プログラムとして開催する「生きもの教室」で活躍する予定です。いや、活躍したということは雨で外に出られなかった、ということなので出番はないほうがいいのですが…。


ここでは、大江町に生息している在来種のカエル全9種のほか、サンショウウオ2種類を飼育しています。彼らの食料は、生きた昆虫です。外でバッタなどを捕まえてきて与えていたのですが、数と種類が増えてきたのでこれが結構大変に…。

そこで、意を決して餌を養殖することにしました。フタホシコオロギという沖縄などにすむ種類で、温度を管理すれば1年中繁殖するので、爬虫類・両生類用の餌としてペットショップでよく販売されています。100匹ほど買ってきて上手に養殖すれば、あっという間に数千~数万匹のコオロギが手に入ります。

でも、管理が大変なのです…。館長佐々木、これまで何度も養殖をしてきました、カエルを飼ってるのか、コオロギを飼ってるのか、よく分からなくなってくるぐらい手がかかります。でもまぁ、生きものを飼うってこういうことかな、と思います。

ケースの中に入っている黒い網は、100円ショップで買った鉢底ネット。これを入れると、コオロギはケース内を3次元的に動けるようになるので、狭いケースでたくさんのコオロギが飼えるようになります。一般に、紙製の卵パックがよくつかわれるのですが、経験上、洗い替えの効く鉢底ネットが衛生的で一番です。



コオロギの餌は、専用のものも販売されていますが、私はもっぱら金魚の餌。安価で栄養豊富。野菜などは腐るので不衛生になりやすいです。でも、金魚の餌は乾燥餌なので水が必要になります。一般に、水は脱脂綿などに染み込ませて与えることが多いですが、脱脂綿を入れると、そこに産卵してしまうので私は使いません。小型のタッパーに水を入れますが、そのままだと溺れてしまうのでここでも鉢底ネットが活躍します。これを水の中に入れておくと、誤って水に落ちたコオロギが脱出することができます。



産卵床としては、園芸用のピートモスか、粉末のパームヤシを使います。バーミキュライトでもいいのですが、粒が大きいのでタッパーからこぼれやすいです。東京の上野動物園では砂を使っていました。ピートモスやパームは使用後に燃えるゴミとして処理できるのが便利な点です。

これを湿らせてタッパーに入れておくと、メスが次々にやってきて産卵します。脱脂綿を産卵床に使ってもいいのですが、孵化した幼虫の体に繊維が絡まって死んでしまう個体が増えるという意見を聞いてからこの方法にしました。

2日ほどで、半透明のタッパーから無数の卵が透けて見えるようになります。これを取り出し、フタで密閉し、日付を書きます。卵、及び孵化したての幼虫は酸素消費が非常に少ないので、密閉したままでも大丈夫。飼育ケースの中には、新しい産卵床を入れておきます。また2~3日後に採卵です。



密閉したタッパーを、大型のタッパーに入れます。この大型タッパーの中には水とヒーターが入っていて28℃に保たれています。パネルヒーターの上に産卵床タッパーを置いて温める方法もあるのですが、そうすると底面と上面の間に温度差が出て、中に結露します。孵化したての幼虫はこの結露で溺れてしまうので、まんべんなく28℃になるよう工夫した結果、たどり着いた方法がこれです。10日ほどで小さなコオロギが生まれてきます。生まれたら、別の飼育ケースに移して育て、ちょうどいい大きさの時に、カエルのお食事になるわけです。

いつにもまして、なかなかマニアックな話題でした。餌を育てるということは、カエルやトカゲなどを飼育している人の間では非常に一般的なことですし、大学の研究室や動物園などでも行われています。でも、そのやり方はみんな少しずつ違っていて、それぞれのこだわりが結構面白かったりします。